その国に居たのは 一人の神様だった。


C.ご飯で奥さん
ばちぃ…ん

 威勢の良い音が 神殿に響き渡った。
 「神様」は 紅くなりはじめた頬に軽く触れて酷く驚愕した顔をした。

「な なな な なっ…」

 ぱくぱくと口を開閉して 言葉にならない言葉を発している桃に至っては自分が何をしたかも理解をしていない様子だ。

「さっ 最低ッ!」
「はっ?ちょっと待て お前何か勘違いしてる…よな?」
「勘違いも何もあるんですかっ?!」

 桃の物凄い剣幕に 「神様」は少したじろぎながらも反発を返した。

「儀式に決まってンだろ?!」

 其処でやっと桃は口を噤んで キョトンとした顔をした。

「…ぎ しき?」

 やっと雛森が話しを聞く体勢に入った事が分かって 「神様」は安堵したように溜息と共に肩の力を抜いた。

「…神族は 一名以上の威勢と婚姻し 食事をする。…つまり」

 「神様」は半幅睨むかのようにして雛森を見据えた。


「お前は 俺の栄養源であって 妻になるんだ。」









D.儀式終了
「え…」

 何で。どうしてそうなるの。
 そうぐるぐると桃は考えた。明らかに話の方向が可笑しい。
 自分は食べられる予定できたのだ…。いや かといって 食べられたいわけではないし。
 しかし 急に「神様」の妻になれといわれても。嬉しいか嫌が どちらかといえば…


 嫌だ。


 まだまだ知りたい事は沢山あったから 食べられるよりかは良いかもしれないが 人並みに恋ぐらいしたい。
 …いや ここで断ればもしかしたら他の子達が同じ思いをするのかもしれない。
 綺麗な顔立ちだから 喜ぶ子は居るだろうが…雛森の血統で そんな人は思いつかなかった。

 そう エンドレス気味に考え始めたとき 苛々とした顔で「神様」が見下ろしていることに気がついた。

「もう良いだろう?腹減って死にそうなんだよ。」
「へっ…?」

 未だ考え事の頭で ぼぅっとした雛森の目に大きく映ったのは 蒼色の瞳だった。

3…

2…

1…

 勢い良く飛んできた桃の右手を 「神様」は易々と捕まえて それから唇を離した。

「儀式終了。」

 同じ手にかかってやるかと にんまりと「神様」は笑った。
 桃はといえば 半泣き状態で 出会って数分の男にセカンドまで奪われたことをぐるぐると考えていた。








E.食事方法
「…あのさァ」

 少しだけ呆れを含んだ声が振ってきて 桃はそろそろと顔を上げた。

「ふ…ふぇ…?」
「俺の食事の基本形なんだから 一々反応すんな。」

 桃は少しだけ固まって それから見事なまでに顔面蒼白になった。

「………基本 形?」

 つまり

「一日三回は最低限すんだぜ?」
「なんで!」

 思わず声の限り叫んで それから桃は慌てて口をふさいだ。
 失念しかけていはいたが 相手は神様だ。
 そう 神様なのだ。失礼なことを言って 村の皆に被害に遭わすわけにはいかなかった。

「誰がんな事するかよ。」

 イラついた声で心外そうに「神様」が思考に間髪を入れず突っ込みを入れた。
 …心が読めるということも 完全に失念していたことにそこでやっと桃は気がついた。

「…あ あの」
「あん?」

 考えるのも口に出すのも一緒ならばと 桃はきっと顔を上げた。
 先ほどから この疑問が全ての元凶なのだ。

「…か 神様の 『栄養』って 何なんですか?」


 ぽかんとした顔の後に 「神様」は驚いたように答えた。


「あれ、言ってなかったか?」











::後書::

言わせてないよね?と思わず見返してしまいました;
天然日番谷と苦労少女雛森。珍しい形態です。(笑)
全てのページ毎に題名がでかでかと書かれるのは
アレが無いと背景がしっくりこないという
そんなどうでも良い理由からです。(死)